Mitochondria × Cancer
栄養代謝から、がんの弱点を解き明かす
栄養代謝シグナル学ユニット
栄養シグナル制御学分野
徳島大学
Mitochondria × Cancer
栄養代謝から、がんの弱点を解き明かす
栄養代謝シグナル学ユニット
栄養シグナル制御学分野
徳島大学
がんの克服は、医学における最大の課題の一つです。近年、がん細胞に特徴的な栄養代謝の変化が、がんの進展に重要な役割を果たすことが明らかになってきました。がん細胞は、増殖や転移に必要なエネルギーや物質を得るために、周囲の栄養素を巧みに取り込み、利用しています。
当研究室では、「がんとミトコンドリア関連栄養代謝」を研究テーマとして、がん細胞が栄養素を利用するしくみを、分子・細胞・組織・個体の各階層から解明することを目指しています。こうした研究を通じて、がんの新たな診断法・治療法の開発につながる知見の創出に取り組みます。
徳島大学 フォトニクス健康フロンティア研究院 栄養代謝シグナル学ユニット
大学院医科栄養学研究科 栄養シグナル制御学分野
平島一輝
未知の生命現象を発見し、そのしくみを分子レベルで解明する
得られた知見を、がんをはじめとする疾病の診断・治療に応用する
科学的に自ら考え、行動できる知的人材を育成する
平島一輝
准教授(独立PI、研究室主催者)
専門: 腫瘍生物学、代謝生化学・分子生物学、実験病理学
資格等: 獣医師、博士(獣医学)、第一種放射線取扱主任者、病理専門医
富山真衣
技術補佐員
ミトコンドリアから、がん栄養代謝の仕組みを解き明かす
ミトコンドリアは、細胞内でエネルギーを生み出すだけでなく、さまざまな栄養素の代謝を担う中心的な細胞小器官です。近年、ミトコンドリアを介した代謝の変化が、がん細胞の増殖や転移に深く関わることが明らかになりつつあります。
当研究室では、ミトコンドリアによる栄養代謝を起点とした細胞内シグナルに着目し、それらがどのようにがん細胞の性質を制御しているのかを研究しています。がんと代謝を結びつける新たな仕組みを解明するとともに、得られた知見を新しい診断法や治療法の開発につなげることを目指しています。
ミトコンドリア栄養代謝から拓く、新たながん診断・治療
当研究室を主宰する平島らは、日本原産植物であるフキに含まれる成分「ペタシン」が、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰに関連する代謝を阻害し、がんの増殖と転移を抑制することを報告しました(Heishima et al., Journal of Clinical Investigation, 2021)。
現在、この成果を新たながん治療へと発展させるため、ペタシンによるミトコンドリア代謝制御の仕組みをさらに詳しく解析しています。基礎研究で得られた発見を、がんの増殖や転移を防ぐ治療介入へとつなげることを目指し、実用化に向けた研究を進めています。
分子から個体までをつなぐ、多角的ながん研究
がんの性質を理解し、有効な介入戦略を開発するためには、生命現象を多角的に捉えることが重要です。当研究室では、一つの現象を分子、細胞、組織、個体の各レベルで解析し、それらを統合的に理解することを重視しています。
細胞生物学、生化学、分子生物学、病理組織学、実験病理学に加え、オミクス解析、バイオインフォマティクス、臨床統計解析を組み合わせ、実験科学と情報科学の双方から、がんと栄養代謝の関係を包括的に解明することを目指しています。
当研究室の研究基盤の一部は、がんの克服を願う有志、患者、がんサバイバー、ケアギバーの皆さまからのご寄付によって築かれています。これまで研究をご支援いただいた皆さま、継続してご支援いただいている皆様に心より感謝申し上げます。皆さまの思いによって得られた研究成果を、将来のがん診断・治療へつなげるため、実用化を目指した研究を継続しています。
*プロジェクトリーダーである平島の徳島大学への異動に伴い、以前の情報公開・連絡方法は利用できなくなっております。大変恐縮ですが、今後のお問い合わせは、当研究室までお願いいたします。
研究室配属・進学希望者の受け入れ
当研究室では、がんと栄養代謝に関心を持つ学生を、学部、博士前期課程(修士課程)および博士後期課程(博士課程)で受け入れており、博士号取得までの全課程で研究指導を行っています。医学・栄養代謝学に限らず、歯学、薬学、獣医学、工学、理学など、多様な専門的背景を持つ学生を歓迎します。また、徳島大学以外からの進学希望者も積極的に受け入れます。
博士後期課程(博士課程)進学希望者は、月18-22万円ほどの生活費支援を受けながら博士号取得を目指せる給付制度(日本学術振興会特別研究員、徳島大学学際的次世代研究者育成プログラム)の申請を支援します。興味がある方は連絡フォームからご連絡ください。
指導方針
腫瘍学・栄養代謝学に関する専門知識の習得にとどまらず、問いを立て、仮説を検証し、データを解釈・議論する科学的基礎力を、研究活動を通じて養うことを重要視します。一人ひとりの成長に応じて、学会発表や論文発表に挑戦する機会を提供します。
どのような知的職業でも必要な能力、すなわち、玉石混交の情報に惑わされず、他者との議論を通じて科学的にデータに向き合う能力を獲得する機会を提供します。生命現象に向き合い、自分の手でデータを生み出し、考え、議論したい人、栄養代謝学を通じて生命と疾病への理解を深めたい人を歓迎します。
Petasin potently inhibits mitochondrial complex I–based metabolism that supports tumor growth and metastasis
Heishima et al. J Clin Invest. 2021. 131(17):e139933. doi: 10.1172/JCI139933.
がん細胞は、取り込んだ栄養素をミトコンドリアで代謝することにより、エネルギーを産生するとともに、DNAやタンパク質などの細胞構成成分を合成しています。こうした活発な代謝活動は、がん細胞の増殖や転移を支える重要な仕組みの一つです。本研究において、平島らは、日本原産の食用植物であるフキから、新しい系統のミトコンドリア代謝阻害剤「ペタシン」を発見しました。培養細胞および動物モデルを用いた実験において、ペタシンは多様ながん細胞の増殖を抑えるとともに、転移巣の形成を強く抑制しました。一方、検討した実験条件下では、明らかな全身毒性や正常組織への障害は認められず、がん細胞に選択的に作用する可能性が示されました。さらに作用機序を検証したところ、ペタシンは呼吸鎖複合体Iを介したNAD/NADH関連代謝を阻害し、がん細胞の代謝機能を低下させることで、抗がん作用を示すことが明らかになりました。これらの成果は、ペタシンを基盤として、ミトコンドリアにおける栄養代謝に着目した、正常組織への影響が少ない新たな抗がん剤や治療戦略を開発できる可能性を示しています。(論文全文はこちら)
Targeting microRNA-145-mediated progressive phenotypes of early bladder cancer in a molecularly defined in vivo model
Heishima et al. Mol Ther Nucleic Acids. 2023. 33:960-982. doi: 10.1016/j.omtn.2023.06.009.
膀胱がんは、比較的早い段階で発見されることが多く、早期に治療を行えば長期間の生存が期待できます。しかし、一部の膀胱がんは悪性度の高いがんへ進行しやすく、そのような場合には生存期間が短くなることがあります。本研究では、悪性度の高いがんへ進行しやすい早期膀胱がんの分子生物学的な特徴を再現した動物モデルを作製し、がんが進行する過程で細胞にどのような変化が起こるのかを調べました。その結果、悪性度の高い病変へ進行しやすいCyclin D1陽性早期病変では、遺伝子の働きを調節する小さなRNA分子であるマイクロRNA-145が減少していました。また、これに伴い、がん細胞の代謝や増殖を促進する重要な因子であるc-Mycの発現量が増加していることを明らかにしました。さらに、減少したマイクロRNA-145を補うことでc-Mycの発現量が低下し、悪性度の高い病変への進行を抑えられることを、動物モデルを用いて確認しました。(論文全文はこちら)
Prognostic significance of circulating microRNA-214 and -126 in dogs with appendicular osteosarcoma receiving amputation and chemotherapy
Heishima et al. BMC Vet Res. 2019. 15(1):39. doi: 10.1186/s12917-019-1776-1.
骨肉腫は、主に小児に発生する希少がんの一つです。患者数が少ないため、研究を進めることが難しく、診断法や治療法の選択肢も限られています。一方、骨肉腫は、特定の大型犬種では比較的高い頻度で発生することが知られています。本研究では、イヌに発生する骨肉腫を研究モデルとして用い、血液中に含まれる「マイクロRNA-214」と「マイクロRNA-126」を調べました。その結果、これらのマイクロRNAが、骨肉腫を発症したイヌの生存期間や、がんが転移するまでの期間を予測する指標となる可能性を示しました。ヒトとイヌの骨肉腫にみられる共通点や違いを比較して研究することで、希少がんである骨肉腫の新たな診断法の開発につながる可能性を示しました。(論文全文はこちら)
MicroRNA-214 Promotes Apoptosis in Canine Hemangiosarcoma by Targeting the COP1-p53 Axis
Heishima et al. PLoS One. 2015. 10(9):e0137361. doi: 10.1371/journal.pone.0137361.
血管肉腫は、血管をつくる細胞から発生する悪性腫瘍で、ヒトでは主に高齢者にみられます。多くは頭部などの皮膚に発生しますが、肝臓や腎臓、脾臓などに生じる「内臓型血管肉腫」もあります。内臓型は特に症例が少なく、その発生や進行の仕組みには未解明な点が多いため、有効な診断法や治療法の開発が求められています。イヌでは、内臓型血管肉腫が特定の大型犬種に多くみられ、主に脾臓や肝臓に発生します。そこで本研究では、イヌの内臓型血管肉腫の細胞を用いて、がん細胞が増殖する仕組みを調べました。その結果、血管肉腫細胞では「マイクロRNA-214」の量が減少していることが分かりました。マイクロRNA-214が減少すると、「COP1」というタンパク質が増加します。COP1は、「ゲノムの守護者」とも呼ばれる重要ながん抑制遺伝子p53の働きを弱めるため、がん細胞は細胞死を回避し、活発に増殖すると考えられます。さらに、血管肉腫細胞にマイクロRNA-214を補うことで、がん細胞に効率よく細胞死を引き起こせることを明らかにしました。これらの成果は、イヌの血管肉腫を手がかりとして、ヒトの希少がんである血管肉腫の新たな治療法を開発できる可能性を示しています。(論文全文はこちら)
特任助教の募集(予定)
当分野において、近日中に特任助教を募集する予定です。
栄養代謝の観点から、がんを含む各種疾病に関する分子機構解明と、新たな診断・治療応用研究に取り組んでいただく若手研究者を募集しています。栄養代謝とがんの研究に対する強い興味をお持ちの方であれば、これまでの研究背景・経験は問いません。
具体的な研究テーマおよび研究の進め方については、着任後に平島と相談しながら柔軟に設計します。手法の変更や新たな方向性への挑戦も歓迎します。実績に応じ、学内外でのキャリア形成を積極的に支援します。応募前のカジュアルなご相談も歓迎いたします。事前の相談は連絡フォームから受け付けています。
募集開始後、詳細な情報を掲載予定です。
学部生の研究室配属希望・大学院生(修士・博士課程)の進学希望
現在、学部生の研究室配属希望、および大学院博士前期課程(修士課程)・後期課程(博士課程)の進学希望を受け付けています。他大学からの大学院進学希望も歓迎いたします。栄養代謝とがんに興味がある方であれば、これまでの研究経験は問いません。
当研究室では、基礎研究から応用研究まで、また細胞・組織・個体レベルの解析、臨床統計・データ解析まで、幅広い医学研究に触れることができます。学部生では、がん・腫瘍生物学に関する専門知識と医学研究の基礎知識、科学的な議論・発表スキルの習得を目指します。博士前期課程(修士課程)・博士後期課程(博士課程)では段階的な成長機会を提供し、発展的な研究・学会発表・論文発表に挑戦する機会を得ることができます。
大学院進学希望の方には、生活費の給付を受けながら研究できる制度の申請サポートを行っています(日本学術振興会特別研究員、徳島大学学際的次世代研究者育成プログラム、スチューデントアシスタント、ティーチングアシスタント、リサーチアシスタント等)。見学、進学相談は随時受け付けています。興味がある方は気軽に連絡フォームからご相談ください。
教育方針や研究指導については、「教育(Education)」のページもあわせてご覧ください。
共同研究のご相談
当分野では、企業、医療機関、および大学・研究機関の皆さまからの共同研究に関するご相談を随時受け付けています。
例として、以下のような解析や評価についてご相談いただけます。
医薬品候補物質のがん細胞・腫瘍に対する作用評価
栄養素、植物由来化合物、食品成分などの生理作用・抗腫瘍作用の評価
ミトコンドリア機能・活性に関する評価
代謝活性および代謝酵素発現の評価
NAD関連代謝の解析・評価
研究目的や対象試料に応じて、実施内容や研究計画を検討します。共同研究をご検討の方は、まずは連絡フォームからご相談ください。
なお、研究内容や実施条件によっては、ご希望に沿えない場合があります。あらかじめご了承ください。
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